ブログ説明

ひどい耳鳴りのためTRT療法を体験
その後、難聴は進行して、ほぼ聞こえず。でも耳鳴りだけは聞こえる(笑)
アブミ骨手術ができるということで、その体験談も書きます。
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2026年1月18日日曜日

冬の朝、補聴器のご機嫌ななめを直した「意外な相棒」

 厳しい寒さが続く今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。 東京の冬は、夜寝る時に暖房を切ってしまうと、朝の冷え込みが体にこたえますよね。

実は、毎朝「布団から出たくない!」と凍えているのは、私だけではなかったようです。



補聴器だって、寒いのは苦手?

最近、朝起きて補聴器を耳につけると、どうも調子が悪いのです。 なんだか元気がないというか、ザラザラとしたノイズが混じるというか……。

例えるなら、電池が切れかかった古いラジオのような音。 音が途切れたり、かすれたり。 「あれ? 故障かな?」と不安になるほど、朝一番の補聴器は機嫌が悪かったのです。

原因は「寒さ」にありました

ふと、「これって、しっかり充電できていないのかも?」と思い当たり、取扱説明書を引っ張り出してみました。

すると、そこには驚きの事実が! **「周囲の温度が低いと、充電性能が低下する」**との記載があったのです。

私の部屋の室温は、充電が全くできないほどではないものの、性能がガクンと落ちる「不調ゾーン」に片足をつっこんでいたようです。補聴器も、寒さで震えていたのかもしれません。

解決策は「一緒に寝ること」!

そこで始めたのが、ちょっと変わった寒さ対策です。

  1. 100均で購入した小さなポーチを用意します。

  2. その中に充電器ごと補聴器を入れます

  3. そのまま、私と一緒に布団の中へ!

なぜポーチに入れるのかというと、私の補聴器の充電器にはロック機構がないからです。そのまま布団に入れると、寝返りを打った拍子に補聴器が放り出され、布団の中で「迷子のアドベンチャー」が始まってしまいますからね(笑)。出勤の朝にこれが起きればもう悲劇です。

毎朝、元気に「おはよう」

この「お布団作戦」を始めてからというもの、補聴器は朝から絶好調! 昨日までのノイズが嘘のように、クリアな音を届けてくれるようになりました。

人間も補聴器も、やっぱり温かいのが一番。 もし、冬の朝に補聴器の元気がなくて困っている方がいたら、ぜひ「一緒に寝る作戦」を試してみてください。(もちろん、ポーチに入れるのを忘れずに!)

これでまた一つ、冬の悩みが解決しました。 さあ、明日も元気に過ごしましょう。

充電のために、補聴器も夜間保温を



2026年1月9日金曜日

聞こえない私の「聞く」を諦めた先にあるもの。〜優秀すぎます文字起こし機能〜

 最近、私は「聞くこと」を半分あきらめています。

耳の状態がここまで悪くなると、どれだけ神経を研ぎ澄ませて努力をしても、結局は空振りに終わることが多いからです。聞こえないことに抗うのをやめたら、少しだけ心が軽くなった気もしています。

とはいえ、生活をしていれば避けて通れないのが**「お店のカウンターでのコミュニケーション」**です。

スマホの文字起こし機能、優秀すぎます(笑)

「筆談」という申し訳なさ

耳が聞こえない私にとって、確実な手段は「筆談」です。 でも、これにはいつも心のどこかで「申し訳ないな」という気持ちがつきまといます。

私はもともと声が聞こえていた時期があるので、自分は「喋る」という楽な方法で伝えられます。一方で、相手にはわざわざ手を止めて「文字を書く」という大きな負担を強いてしまう。自分は楽をしているのに、相手にだけ苦労をかける。このアンバランスさが、結構ツラいものなのです。

救世主は、ポケットの中に

そんな私を助けてくれるのが、テクノロジーの力。愛用しているGoogle Pixelの音声文字入力機能です。

カウンターでスマホを差し出し、機能をオンにする。「耳が聞こえないので、これでお話ししてもいいですか?」と一言添えれば、相手の話したことがリアルタイムで画面に文字となって浮かび上がります。

大きめの文字設定にしておけば、読み取りもスムーズ。日本の皆さんは優しいので、こちらの状況を察して、なんとなくペースを合わせてくれることが多いのも本当にありがたいなと感じます。

優秀すぎて起こる「笑える落とし穴」

ただ、この便利な機能にも「落とし穴」があります。それは、この機能が優秀すぎること。

レジやカウンターって、当然ながら自分たち以外にもたくさんの人がいますよね。 私は相手が今喋っているのかどうかが判断できないので、画面に文字が出れば「あ、返事だ」と思って反応します。ところが、目の前の店員さんはポカンとした顔。「へ?」という空気になります。

そうです。隣のレジのお客さんの会話まで、私のスマホは完璧に拾い上げて文字にしてくれていたのです(笑)。 「あ、これ隣の人ですね!」なんて笑って済ませられることも多いですが、高性能すぎるのも考えものですね。

ポイントカードが「沈黙」を連れてくる

そして、最近一番「不便だな」と感じるのが、皮肉にも便利なはずの**「スマホのポイントカード」**です。

最近は何でもスマホ一台にまとまっていますが、支払い時にポイントカードの画面を出そうとすると、文字入力機能を一旦閉じなければなりません。

この瞬間に、せっかく繋がっていた言葉の橋がぷつりと切れて、私はまた「音のない不便な世界」に引き戻されます。 店員さんが何かを確認したそうな顔をしても、画面はポイントカード。何を言われているのか、もう分かりません。

「こういう時だけは、昔ながらの物理カードの方がいいな……」

そんな贅沢な悩みを感じる今日この頃です。 便利さと不便さの間を行ったり来たりしながら、今日も私はスマホを片手に、街の中へ出かけていきます。

スマホの文字起こし機能は便利ですよね



2026年1月4日日曜日

自動改札の「ピッ」が聞こえない不便と、Suicaへの忍耐

 お正月休みも今日で終わり。 明日からは新しい週、そして2026年の仕事始めですね。

仕事が始まるということは、あの「通勤ラッシュ」も戻ってくるということ。 毎朝、大量の人波に揉まれながら自動改札機を通り抜ける……。実は私にとって、この時間がちょっとしたストレスだったりします。

確認音が聞こえず、自動改札機の刑にあう女性



「音」が頼りにならないラッシュの攻防

一人で改札を通るときは、特に問題ありません。 でも、ラッシュ時は別です。

Suicaをかざしたときの「ピッ」という音。 私には、これが全く聞こえません。

もちろん、改札機の前方には残高や受付状態を表示する画面があります。 でも、人が次から次へと連続して通るラッシュ時って、前の人の残高が表示されたままで、自分の表示に更新されないことがよくあるんですよね。

「運任せ」で通り抜ける瞬間

音が聞こえず、表示も変わらない。 そんなとき、私は「たぶん、今ので反応したはず」と自分を信じて進むしかありません。

大抵の場合は、音が鳴っていて、ただ表示が追いついていないだけ。 改札機はちゃんと処理してくれていて、ドアも開いたままです。

でも、たまに……本当にたまに、タッチが認識されていないときがあるんです。

聞こえる人なら、「ピッ」と言わなかった瞬間に「あ、もう一回タッチしなきゃ」と立ち止まれますよね。でも、私にはそれができません。

「いつも通り、表示が遅れているだけだろう」と思って進もうとすると、目の前でガシャン!とドアが閉まる。 あの瞬間の申し訳なさと、後ろの人からの視線……。結構恥ずかしいですし、何より精神的にこたえます。

「Suicaのシステム、もう少しだけ視覚的に分かりやすく改善してくれないかな……」と、つい願ってしまいます。

クレカタッチの「遅さ」が逆にありがたい

ちなみに最近増えている、JR以外のクレカタッチ対応改札。 あれは元々の処理がゆっくりですよね。

しっかり立ち止まって、カードをかざして、LEDが「青」に変わるのを自分の目で確認してから進む。 あの「間」があるおかげで、クレカタッチの方は安心して通れています。

JR東日本さんも、いい加減にSuicaに固執せずに、クレカタッチにしなよ。

では、皆さん、今年も仕事始め頑張りましょうね。

表示が遅いSuica改札機、遅くてもなんとかなるクレカタッチ


2026年1月2日金曜日

【新年のご挨拶】自分らしく、明るく。今年の抱負と昨年の振り返り

皆様、あけましておめでとうございます! 旧年中はブログを覗いてくださり、本当にありがとうございました。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

あけましておめでとうございます


漫画で伝える「聞こえにくい日常」

今年も引き続き、耳が聞こえにくい人の日常や、日々のちょっとした体験談を、できる限り漫画やイラストを交えてお届けしていきたいと思っています。 「あるある!」と共感してもらえたり、聴覚障害について少しでも知っていただけるきっかけになれば嬉しいです。

昨年を振り返って:アブミ骨手術と今の体

昨年は私にとって、少し試練の年でもありました。 2回目となる**「アブミ骨手術」**を受けたのですが、残念ながら結果はあまり芳しいものではありませんでした。 手術による改善を期待していましたが、それ以上に感音難聴の方が進行してしまった、というのが今の正直な現状です。

正直、「これからどうなっていくんだろう」という不安がゼロではありません。 でも、どれだけ悩んでも、これは自分自身の体なんですよね。 自分の体に文句を言っても仕方がありませんし、どんな状況になったとしても、私らしく**明るく過ごしていこう!**と決めています。

今年の目標は「お気楽に、ストレスフリーに」

今年の切実な願いは、これ以上聴力を悪化させないこと。 そのために、今年は特に**「ストレスを溜めないこと」**を大切にしたいと思っています。

仕事もあまり気負いすぎず、できるだけ「お気楽」なスタンスを心がけて、心穏やかに過ごす1年にしたいです。無理せず、自分のペースを守っていこうと思います。


いつも読んでくださる皆様からの反応が、日々の励みになっています。 些細なことでも構いませんので、ぜひお気軽にコメントをいただけると幸いです!

2026年が、皆様にとっても穏やかで素敵な1年になりますように。

2025年12月30日火曜日

聴覚障害と夜行高速バス。静寂という特権と、隣り合わせの不便さ

 皆様は夜行高速バスをよく利用されますか? 私は、寝ている間に移動できる効率の良さから利用することがあります。もちろん飛行機が最も好きですが、バスも選択肢の一つです。

聴覚障害を持つ私にとって、夜行バスでの移動は独特の「環境」があります。

補聴器を外せば静かに寝られるけれど、トイレ休憩に気付けないのが難点ですね


どこでも静寂に浸れる「特権」

就寝時、私は補聴器を外します。充電のためでもありますが、一番の理由は紛失防止です。狭い車内で失くしてしまえば、それこそ悲劇ですから。

補聴器を外せば、私の耳は音を全く認識しなくなります。聞こえるのは慣れてしまった耳鳴りだけ。 実はこれ、一種の「特権」だと思っています。

耳栓をしなくても、補聴器を外すだけで、うるさい夜行バスだろうが飛行機だろうが、自宅の静かな寝室と全く同じ環境になります。どこでもスヤスヤと寝られるのは、この身体ならではの利点と言えるかもしれません。

常に付きまとう「緊張感」

しかし、音が聞こえないことは「情報の遮断」でもあります。車内アナウンスは一切聞こえません。

特に、早朝の途中バス停で降りる時はかなり気が張ります。通過してしまったら大変なことになるからです。スマートバンドの振動を目覚まし代わりに使って、周りに迷惑をかけずに起きる工夫はしていますが、「起きなければ」というプレッシャーで、案外寝られないことも多いのが実情です。

熟睡できるがゆえの欠点

また、あまりに静かに熟睡できてしまうため、途中のトイレ休憩にはまず気づけません。 そのため、必ず「トイレ付き」のバスを選ぶことが絶対条件になります。休憩に行けない不便さは、車両選びでカバーするしかありません。

安さがあるから、我慢できる

不便なことも多い夜行バスですが、身体障害者手帳による割引は非常にありがたいものです。 多くの路線で半額になり、東京〜大阪間なら5,000円ほどで移動できてしまいます。

この安さがあるからこそ、多少の不便やリスクも「仕方ない」と割り切って、我慢することができます。これからもスマートバンドなどの道具を駆使しながら、この「静かな移動手段」を活用していくつもりです。

聴覚障害者の夜行バス旅行、メリットとデメリット


2025年12月25日木曜日

音が消えて気づいた「世界の輪郭」と、周りに合わせる努力の日々

私の耳が聞こえにくくなってから、しばらく経ちました。徐々に衰えてはいったものの、ある時ガクンと聴力が落ちた瞬間があり、その日を境に私の世界は一変しました。

そこで痛感したのは、**「この世の中は、音で気づくことを前提に作られている」**という事実です。

音が聞こえなくても頑張って生きる


自分の存在さえも「音」で確認していた

耳が悪くなってまず戸惑ったのは、自分自身の体の動きです。 服が擦れる音、どこかに手が触れる音、そして地面を叩く足音。私たちは無意識にそれらの音を聞くことで、自分の動きや歩調を確認しているのだと初めて気づきました。

音が聞こえなくなると、自分の体の感覚がどこか頼りなく、浮いているような気持ちになります。まるで自分が「忍者」にでもなったかのように、音もなく忍び足で歩いている感覚。自分の存在の輪郭までもが、音と共に消えてしまったかのようでした。

「普通」に歩くための、見えない努力

外を歩くときは、健聴者の方々が想像する以上に神経を研ぎ澄ませています。特に狭い生活道路は、私にとって戦場に近い緊張感があります。

最近のハイブリッド車やEVは本当に静かです。音を頼りにできない私にとって、彼らは背後から音もなく忍び寄る存在。だからこそ、私は**「あえて一方通行の道を、車と逆向きに歩く」**という工夫をしています。

前から来る車を目で確認し、相手の動きを予測する。 「普通に歩く」という当たり前の動作ひとつとっても、耳が聞こえる方と同じように安全に過ごすためには、こうした小さな、けれど欠かせない努力の積み重ねが必要なのです。

ルールとマナー、そして安全への願い

どれだけこちらが注意を払い、周りの流れに合わせようと努力していても、どうしても恐怖を感じることがあります。

特に最近目立つ「LUUP(電動キックボード)」には、強い憤りを感じることがあります。交通ルールを無視した走行、そして何より「気配」を感じさせない静かさで、すぐ横をすり抜けていく。 こちらがどれだけ周囲に気を配って「合わせよう」としていても、予測不能な動きをされると、防ぎようがないのです。

ひどいのになると接触した上に、謝るどころか悪態をつき罵声を浴びせるような人まで現れます。まあ幸いなことにその罵声には私の耳には届かないですけどね。

おわりに

音が消えた世界で生きることは、常に周囲の状況を読み解き、自分を適応させていくプロセスの連続です。

「周りに合わせるための努力」は、正直に言えば疲れることもあります。でも、そうして研ぎ澄まされた感覚で捉える世界も、また一つの現実です。

もし街中で、何度も後ろを振り返ったり、慎重に道を歩いている人を見かけたら、「見えないところで努力している誰か」がいるかもしれないと、心の片隅に留めておいてもらえたら幸いです。

耳が悪い人も結構苦労しています



2025年12月23日火曜日

音のない朝と、私の「命綱」について

 皆さんは毎朝、どのようにして目を覚ましていますか? 多くの方は、スマートフォンのアラーム音や、目覚まし時計の「ピピピ」という音で一日を始めるのではないでしょうか。

聴覚障害を持つ私にとって、朝の目覚めには少し特殊なハードルがあります。今日は、日常生活の中で「実は使えないもの」と、その不便さをどう補っているかについてお話ししようと思います。

ウェアラブルスマートバンドが目覚ましの命綱

枕元で鳴り響く音も、私には届かない

私は寝る時、補聴器を外します。物理的に耳のスイッチをオフにするような感覚で、周囲の音は一切聞こえなくなります。そのため、どんなに大きな音で鳴る目覚まし時計をセットしても、私を現実の世界へ引き戻してはくれません。

よく「振動タイプの目覚まし時計」という解決策が挙げられます。強力なバイブレーションで起こしてくれる機械ですが、これも意外と一筋縄ではいきません。枕の下に置いていても、寝返りを打って位置がずれてしまうと、もう効果がなくなってしまうからです。

腕に伝わる小さな振動が「命綱」

今の私にとって、本当の意味での目覚まし時計——いわば「命綱」となっているのは、スマートウォッチやリストバンドの振動機能です。

手首に直接巻き付いているので、寝相が悪くても場所がずれることはありません。この小さな振動だけが、唯一確実に私を朝へ連れ出してくれる手段です。

「もしも」に備える、ホテルでの習慣

ただ、どうしても拭えない不安もあります。それは「寝ている時の火災報知器」です。

特にビジネスホテルのシングルルームなどに一人で泊まっているとき。もし深夜に火災が起きて警報が鳴り響いても、補聴器を外している私には全く聞こえません。「きっと火事になったら逃げ遅れてしまうのだろうな」という不安が、常に頭の片隅にあります。

そのため、宿泊する際にはできる限りの自衛策として、**「可能な限り下層階のお部屋を」**とリクエストするようにしています。万が一の際、少しでも早く外へ避難できるようにとの思いからです。

寝ているときの工夫



音という情報が遮断された世界で、安全を確保しながら過ごすには工夫が欠かせません。「音」が前提の社会の中で、どうすればもっと安心して眠れるようになるのか。そんなことを考えながら、今日もリストバンドを腕に巻いて眠りにつきます。

この記事を通して、当たり前だと思われている「音」の役割について、少しでも想像を広げていただけたら嬉しいです。

2025年12月22日月曜日

宅配便さん、ごめんなさい。――「待っている」のに聞こえない、私の葛藤

 今日も玄関のドアを開けると、足元にハラリと落ちる一枚の紙。 おなじみの「不在連絡票」です。

時刻を確認すると、つい30分前。 その時、私はリビングで本を読んでいました。 ちゃんと起きていたし、家の中で活動していた時間です。

負い目を感じる必要はないのかもしれませんが、聴覚障害があるため、静かな部屋の中で鳴り響いているはずの「ピンポーン」という音が、私の世界には届かないのです。

聴覚障害者は、通販の受け取りに結構困ってます


「できること」は全部やっているけれど

もちろん、何の対策もしていないわけではありません。 コンビニ受け取りや、PUDOステーションなどの宅配ロッカーが選べる時は、必ずそちらを指定します。クロネコメンバーズなどのサービスで事前に配達予定が分かれば、その時間はインターホン付近で神経を研ぎ澄ませたり、手元の通知をこまめにチェックしたりしています。

けれど、世の中のすべての荷物が「置き配」や「ロッカー受け取り」に対応しているわけではありません。 発送元が指定を許していなかったり、代金引換や貴重品、あるいはサイズの問題で、どうしても「対面での受け取り」が避けられない場合があります。

「この時間に届く」と分かっていても、ふとした瞬間に視線を外してしまったり、家事をしていて手元の振動に気づかなかったり。 そうしてドアを開けた瞬間に不在票を見つけると、胸がキュッとなります。

あの「暴言不在票」に感じたこと

以前、ネットで悲しいニュースが話題になりました。 耳の聞こえない方の家の不在票に、配達員が「ツ●ボだから不在(※実際は伏せ字なし)」と心ない言葉を書き残したという事件です。

もちろん、差別的な言葉は許されることではありません。 でも、私はそのニュースを見た時、怒りよりも先に「配達員さんの気持ちも、分からないではないな……」と思ってしまったのです。

重い荷物を抱えて、階段を上がって、チャイムを鳴らして。 「家の中に気配はするのに、何度鳴らしても出てこない」 そんな状況が続けば、人間だもの、イライラしてしまうこともあるでしょう。 その苛立ちをぶつけさせてしまうほど、私は彼らの仕事を邪魔してしまっているのではないか。 そう思うと、申し訳なさが募ります。

ただ聴覚障害者も悪気はないのですよ。だって自分が注文したものだから、自分自身が早く受け取りたいと思うじゃないですか。わざと居留守を使っているわけではないのですよ。

「居るのに出ていけない」ことが、一番申し訳ない

結局、問題は「居留守だと思われること」ではないのかもしれません。 むしろ、「家にいるのが分かっているのに、届いたことに気づけない」ことこそが、お互いにとって一番のストレスなんだと感じます。

「電気もついている、物音もする。それなのに、なぜ出てこないのか?」 そう思わせてしまうのが、本当に心苦しいのです。 わざと無視しているわけではない、あなたを待っていた。 でも、どれだけ意識していても、「音」という唯一の通知手段が私には届かない。

宅配業界の皆さんが、日々どれほど過酷な労働環境で働いているかは理解しているつもりです。 だからこそ、この「気づけない」という物理的な壁が、もどかしくて、申し訳なくてたまりません。

発送元にも考えてほしいこと

正直なところ、発送元で配達日時がしっかり指定できれば、こうしたすれ違いのほとんどは防げるはずです。 お店側にとっては手間のかかる作業かもしれませんが、それも商売の一部ではないでしょうか。届く時間がわかっていれば、私もそれなりの準備をして待つことができます。

最近では、あまりに日時指定が不自由な店だと「ここでは買うのをやめようかな」と自衛策を考えることさえあります。

「発送元、配達員、受け取り手」。 この三者のバランスがもっとうまく取れて、誰にとっても負担のない受け取り方が当たり前になればいいな。 そんなことを願いながら、今日も私は再配達の依頼ボタンを申し訳ない気持ちで押しています。

宅配便の配達員さん、いつも本当にありがとうございます。 そして、今日も気づけなくて、本当にごめんなさい。


家に居るけど気付けない、配達。私だって受け取りたい


2025年12月20日土曜日

駅のアナウンスマラソン、スタートし損ねた私。

 日本の鉄道は運行時刻が正確ですが、それでもたまに遅延は発生します。大きな駅では、放送一つで大勢の人が一斉に動き出す「民族大移動」のような光景が日常茶飯事です。

鉄道の遅延情報は、空港の丁寧な案内とは違います。放送すればそれっきり。基本的には音声のみで、わざわざ文字情報がセットで流れることはありません。このあたりは、もう「諦めるしかない」と割り切っています。

駅の構内放送マラソンと私


駅構内でマラソンか? 一斉スタート?

今日も、私が向かおうとするホームを目指して、大勢の人が一斉に走り出しました。まるでマラソンのスタートです。今日は皆さん、かなり気合が入っています。そういえば相変わらず、私には聞き取ることのできない構内放送が「モゴモゴ」と響いていました。放送が聞こえないこと自体はもう気にも留めていませんが、このマラソンの行き先が自分の乗るホームだったことだけは、少し気がかりでした。

行き着く先には・・・

ホームに辿り着いてようやく判明したのは、向かいのホームで「接続待ち」をしている電車へ人々がなだれ込んでいた、だけ。私が乗るのは反対向きのローカル線。必死に走る必要なんてどこにもありませんでした。いやぁ、つられて走らなくて良かったです。

安いんだから文句言っちゃだめだよねぇ

鉄道は、ほぼ構内放送だけなんだよねぇ

結局のところ、鉄道は飛行機よりもずっと身近で、何より「安い」乗り物です。一回あたりの利用額が低い私たちに対して、いちいちコストをかけて文字情報まで用意してほしい、なんて贅沢を言っても仕方がありません。

「高いチケット代を払う飛行機ならいざ知らず、安い電車なんだから、これくらいの不便(情報格差)はセットで付いてくるものなんだよね」

そんな風に、価格相応の不自由さをまるっと飲み込んで、静かなローカル線に揺られることにしました。

そーいえば、鉄道って障害者割引も少ないですけどねぇ。

2025年12月19日金曜日

見えない障害と「虫」の境界線?——聴覚障害者の独り言

 こんにちは。 今日は、ふと思った「目に見える不自由」と「目に見えない不自由」の違いについて、少し綴ってみたいと思います。

見えないものは忘れられ易い。自己主張はこのときだけ


「見えないもの」は忘れ去られる

例えば、松葉杖をついている人が目の前にいたら、誰だって「あ、足が不自由なんだな」とすぐに分かりますよね。よほど意地悪な人でもない限り、自然と道を譲ったり、ドアを開けたりといった「いたわり」の行動が生まれます。それは、不自由さが常に視覚に入っているからです。

ところが、聴覚障害はそうはいきません。 黙っていれば、周りが気づくことはまずありません。

特に私のように、普通に話し、会議をこなし、プレゼンまで大好きなタイプだと、相手は私が「聞こえにくい」という事実を、ものの数分で忘れてしまいます。

質疑応答は、いつだって真剣勝負

プレゼンが終われば、容赦ない質問の嵐が飛んできます。 私は相手の応答を聞き取るために、普通の人の3倍近いエネルギーを注いで集中します。必死に言葉を拾い、きっちりと言葉を返す。

そうやってスムーズにやり取りが続いてしまうからこそ、相手はますます「この人は聞こえているんだ」と誤解(?)し、さらに容赦ないスピードで言葉をぶつけてくる……というループに陥ります。

私くらいの「強者」になれば、 「聴覚障害者なんだから、もうちょっと優しくしてくださいよ〜」 なんて冗談めかして言えちゃいますが、これが言えずに一人で抱え込んでしまう人は、きっと相当しんどいだろうな、と思うのです。

熊、昆虫、そして「聞こえない私」

人間って、結局「目に見えるもの」に対しては優しくなれるけれど、見えなくなった途端に意識の外へ追いやってしまう生き物なのかもしれません。

極端な話、環境保護だってそうです。

  • 熊: デカくて見えるから「保護しよう!」となる。

  • 昆虫: 小さくなると、保護する気が失せてくる。

  • 蚊や例の黒い害虫: 見えたら最後、駆除・絶滅の対象。

  • ウイルス: もはや見えないので、徹底的に排除したい。

「目に見えるかどうか」が、人間の判断基準にこれほど影響しているとしたら……。 常に認識してもらえる車椅子や松葉杖に比べて、忘れ去られがちな聴覚障害は、このヒエラルキーでいうと「虫以下」の位置にいるのかもしれません(笑)。

見えないものは忘れられやすいのが現実


それでも、ちゃっかり生きる

かといって、「私は耳が不自由なんです!」と常にアピールして優しさを引き出すのも、なんだか図々しい気がして、普段は黙っています。

あ、でも、一つだけ例外が。 バスに乗る時だけは、サッと「障害者手帳」を提示します。

だって、運賃が半額になりますからね。 目に見えない不自由さを抱えている分、使えるメリットはちゃっかり使う。 「マネー」はいつだって大切ですから!

2025年12月17日水曜日

【5コマ漫画】聞こえないってこういうこと。補聴器ユーザーが「実は困っている」5つの瞬間

 今日は、以前作成したキャラクターを使って、私の日常にある「聴覚障害(補聴器ユーザー)あるある」を5コマ漫画にしてみました。 一見普通に生活しているように見えても、実はこんなシチュエーションで困っているんです。

まずは、AIに描いてもらったこちらの漫画をご覧ください。

難聴の私が嫌う5大シュチュエーション



漫画で描いた「苦手なもの」ワースト5

この漫画を描くにあたって、私が特に「これが辛い!」と感じている5つの場面をピックアップしました。

1. 公衆浴場、ビーチ、プール

理由:補聴器を外さなきゃいけないから 水場では補聴器が故障する原因になるため、どうしても外さなければなりません。外した瞬間、そこは「無音の世界」。周りの楽しそうな笑い声も聞こえなくなり、自分だけ切り離されたような孤独感を感じてしまう場所でもあります。

2. 大きな部屋での会議

理由:話者が遠くなるので聞こえにくいから 広い会議室は音が拡散してしまいます。話している人との距離が遠くなると、補聴器をしていても声がぼやけてしまい、内容を聞き取るのが非常に困難になります。マイクの使用をお願いしたいです。

3. ひそひそ話、内緒話をする人

理由:声の音量を下げるから聞こえません 「ここだけの話…」と声を潜められると、単純に音量が下がるため、私の耳には届かなくなります。内緒話を共有できないのは、ちょっと寂しいものです。

4. 高級レストランなど

理由:マナーとして声を絞るため聞こえません 雰囲気の良いお店ほど、静かに話すのがマナーですよね。その「上品な話し声」が、実は一番の天敵。ガヤガヤした居酒屋も大変ですが、静寂の中でのボソボソ声もまた、聞き取りを阻む壁なのです。

5. 要点をまとめずに長々と喋る人

理由:集中力の限界 これが一番の悩みかもしれません。 聞こえにくい音を脳内で補完しながら聞く作業は、ものすごい集中力を使います。ダラダラと長い話をされると、聞いているだけで脳が疲弊してしまうのです。


【補足】誤解しないでほしい「2つのこと」

苦手な場面を紹介しましたが、ここで少し補足させてください。「静かな場所」や「長い話」がすべてダメなわけではないんです。

① 図書館は大好きです 「高級レストランが苦手なら、図書館もダメなの?」と思われるかもしれませんが、図書館は全く苦になりません。 なぜなら、そこは「話をしない場所」だから。人の話を聞き取る必要がない静寂は、むしろ心安らぐ空間です。私が困るのは「静かな環境で、小さな声を聞き取らなければならない時」なのです。

② 「聞き流していい話」なら長くても平気 長話がすべて苦手なわけではありません。雑談や世間話など、「へー、そうなんだ」と聞き流して良い内容なら、いくら長くても大丈夫。 聞こえない部分は適当にスルーすることには慣れています(笑)。

本当に大変なのは、「真剣に聞かなくてはいけないこと(仕事の指示など)」を、要点を得ずに長々と喋られること。 一言一句漏らさず聞き取ろうと神経を研ぎ澄ませている時に、ゴールが見えない話をされると、あっという間にHP(集中力)がゼロになってしまいます。


難聴な人が苦手なことまとめ


【結び】
もし、あなたの周りに補聴器を使っている人がいて、会議や食事の席で難しそうな顔をしていたら、「あ、いま集中して音を拾おうと頑張っているんだな」と思い出してもらえると嬉しいです。


2025年12月16日火曜日

空港で「ポツン」と一人ぼっち。笑えるようで笑えない、ある「見えない壁」のお話です。

 旅行や出張で空港に行くこと、ありますよね。搭乗ゲート前のあの待ち時間。これから始まる旅へのワクワク感と、手持ち無沙汰な退屈さが入り混じる、独特の空間です。

そんな日常のひとコマを切り取って、少し風刺の効いた4コマ漫画を作ってみました。テーマは「搭乗口の変更」。よくあるトラブルですが、少し視点を変えてみると、普段は見過ごしがちな「壁」が見えてくるかもしれません。

まずは、こちらの漫画をご覧ください。

空港で民族大移動? 放送が聞こえず置いてけぼり

いかがでしたか?

主人公は余裕の表情でスマホを見てリラックスしていたのに、ふと気づけば広い待合室にポツンと一人。まるで異世界に転移してしまったかのような孤立感。「えっ!? 誰もいない!?」というあの焦りは、想像するだけでヒヤッとしてしまいます。

原因はシンプル。「搭乗口変更のアナウンス」を聞き逃したことですね。

空港のスピーカーって、どうしても音がこもっていたり、割れていたりすることが多い気がしませんか? 「ピンポンパンポーン」というチャイムの音は聞こえるのに、肝心の内容が周囲の雑踏にかき消されて「ザザッ…ピー…ゴニョゴニョ…」としか認識できない。これ、誰にでも経験があることではないでしょうか。

さて、ここで少しだけ想像力を働かせてみてください。もし、この場にいたのが、耳の聞こえに何らかの不自由さを感じている「難聴」の方だったら、どうでしょう。

難聴というと「音が全く聞こえない」状態をイメージされることが多いのですが、実際はそう単純ではありません。「音は聞こえているけれど、何を言っているのか言葉としてハッキリ聞き取れない」というケースがとても多いのです。

特に、機械を通した声や、ガヤガヤとした騒音の中でのアナウンスは、聞き取りのハードルがエベレスト級に跳ね上がります。補聴器をつけていたとしても、全ての雑音をきれいに取り除いてくれるわけではないんですよね。

漫画の2コマ目、周囲の人たちが民族大移動かのごとく一斉に動き出したあの瞬間。音声情報が入りづらい人にとって、周囲の視覚的な変化はとても重要な「状況判断のヒント」になります。「あれ、何? みんな急に立ち上がって、どうしたの?」とキョロキョロ周りを観察して状況をつかもうとしている間に、決定的なタイミングを逃してしまう。

この「情報の波から、自分一人だけ取り残されていく恐怖と焦燥感」は、当事者以外にはなかなか伝わりにくいものがあります。

そして、極めつけは4コマ目のオチです。

慌ててカウンターに向かった先で目にしたのは、今まさに係員さんがホワイトボードに「変更先」を書き込んでいる姿。

「それを書くのは…みんなが居なくなった後なのね…」

主人公の心の声が、すべてを物語っていますよね。日本の多くの公共空間では、いまだに「音声案内」がメインで、「文字などの視覚情報」は補助的な扱いになりがちです。「耳で聞くこと」を前提としたシステムの中では、どうしてもそこからこぼれ落ちてしまう人がいるのが現実です。

もちろん、係員さんに悪気があるわけではないでしょう。もっとも手軽にかつ迅速にできる情報伝達の手段が「声」だと思いますから。

音声アナウンスと同時に、手元のスマホに通知が来たり、もっと目立つモニターに大きな文字で表示されたりする。というのは理想過ぎて、文字表示の準備のために大多数の人への音声による伝達を遅くするのはナンセンスでしょう。でも、視覚など音声以外の情報伝達が、あまりに遅れてしまうことがなければそれでいい、そんな「当たり前の配慮」があれば、救われる冷や汗や孤独感も多いはずです。

漫画を見て「あるある!」とクスッと笑っていただきつつ、その裏側にある「見えないハードル」について、ほんの少しだけ思いを寄せていただけたら嬉しいです。

視覚情報も提供して・・・無茶な理想だけど



2025年12月15日月曜日

【4コマ漫画】オフィスに潜む「見えない壁」―補聴器ユーザーと固定電話の葛藤について

現代のオフィス環境において、電話対応は依然として基本的な業務スキルのひとつと見なされています。しかし、多くの人が無意識に行っている「受話器を取って耳に当てる」という動作が、聴覚に課題を抱える当事者、特に補聴器ユーザーにとっては、極めて高度な技術的・心理的ハードルとなっている現状があります。

今回は、一人の会社員の視点を通して描かれた4コマ漫画をもとに、オフィス内に存在する「見えない障壁」について考察します。

聴覚障害者の電話の苦悩


構造的なミスマッチ:マイク位置のジレンマ

まず特筆すべきは、物理的なインターフェースの問題です。漫画内でも象徴的に描かれている通り、一般的な耳掛け型補聴器のマイクは、耳の穴(外耳道)ではなく、耳介の上にかかる本体部分に位置しています。

健聴者向けの固定電話は、受話器のスピーカーを耳の穴に密着させることを前提に設計されています。しかし、補聴器ユーザーが同じように受話器を当てても、補聴器のマイクは音を拾うことができません。音を正確に拾うためには、受話器を耳の上部へずらし、マイクの位置にピンポイントで合わせる「探索」の動作が必要不可欠となります。

受話器を補聴器のマイクに合わせるのがめちゃ苦労します


この数秒のラグ(遅延)は、周囲からは単なる「もたつき」に見えるかもしれません。しかし、当事者にとっては、精密機械のチューニングを強いられるような、極めて緊張を強いられる瞬間なのです。

情報の欠落と「冒頭の空白」

物理的な調整に時間を要することの最大の弊害は、通話冒頭の情報の欠落です。受話器の位置が定まり、ようやく音がクリアに聞こえ始めた頃には、相手方の「名乗り」が終わっているという事態が頻発します。

ビジネス電話において、相手の社名や氏名は最も重要な情報のひとつです。それを聞き逃した状態で会話をスタートさせなければならないプレッシャーは計り知れません。「すみません、もう一度お願いします」という一言は、一度や二度であれば容易でも、日に何度も繰り返すとなれば、当事者の自尊心を削り、業務への自信を喪失させる要因となり得ます。

心理的負担という「強敵」

この漫画が浮き彫りにしているのは、単なる「聞こえにくさ」という機能的な問題だけではありません。静寂に包まれたオフィスの中で、周囲の視線を感じながら電話に出ることへの過度な緊張感、そして「また失敗するかもしれない」という予期不安です。

「受話器」という無機物が、まるで意思を持った強敵のように立ちはだかる描写は、決して誇張表現ではなく、当事者が日々感じている心理的圧迫感を正確に視覚化したものと言えるでしょう。

オフィスのユニバーサルデザインに向けて

近年、障害者差別解消法の改正に伴い、事業者には「合理的配慮」の提供が義務化されました。しかし、固定電話の対応のような日常的な業務に関しては、個人の努力や我慢に委ねられているケースが少なくありません。

この漫画が示唆するのは、当事者の苦悩だけではなく、組織としての対応の必要性です。例えば、電話対応業務の免除や代替、音声をテキスト化するツールの導入、あるいはBluetooth等で補聴器と直接接続可能な電話機の採用など、技術的・制度的な解決策は存在します。

一枚の漫画を通して、オフィスの片隅で起きている「音のない戦い」に想像力を働かせること。それが、真に働きやすい環境を作るための第一歩となるのではないでしょうか。


捕虫器ユーザーと受話器との戦い


2025年12月13日土曜日

「背中のミスコミュニケーション」を防ぐために。難聴とヘルプマーク、そしてもう一つの工夫

街中で「ヘルプマーク」を見かける機会が増えてきました。外見からは分からなくても、援助や配慮を必要としていることを知らせるこのマークは、社会の中で少しずつ浸透しています。しかし、聴覚に障害を持つ私にとって、このマークだけではカバーしきれない「もどかしい瞬間」が存在します。それは、背後からのコミュニケーションです。

本日は、私が実践している、ある小さな工夫についてお話ししたいと思います。

難聴だと背後からの声掛けに気付けないのです


「無視してしまった」という罪悪感

重度の難聴がある場合、背後からの呼びかけに気づくことは非常に困難です。 例えば、バスや電車の中での出来事です。混雑した車内で、親切な誰かが私のヘルプマークに気づき、「席を譲りましょうか?」と後ろから声をかけてくれることがあります。

視界に入っている相手なら気づくことができますが、死角となる後方から声をかけられても、私はその声に全く気づくことができません。 あとになって、ふとした周囲の視線や気配で「あ、もしかして今、声をかけられていたのではないか?」と察する瞬間があります。しかし、時はすでに遅く、相手の方は反応のない私の背中を見てどう思ったことでしょうか。

その時、悪いことをしたわけではないのに、胸に小さな罪悪感が広がります。 「せっかくの親切を無視してしまった」 「無愛想で失礼な人だと思われただろうな」

相手の善意を受け取れなかった申し訳なさと、誤解されてしまったかもしれないという不安。この「背中のミスコミュニケーション」は、私にとって精神的な負担となっていました。

状況を「可視化」するという解決策

そこで私が始めたのが、今回ご紹介する4コマ漫画にあるような「状況の可視化」です。 ヘルプマークと一緒に、アクリルケースに入れた独自のタグを鞄につけることにしました。そこには、はっきりとこう記しています。

『【難聴です】【聞こえてません】』

これは単なる事実の提示ですが、コミュニケーションのあり方を劇的に変える力を持っています。

この表示があることで、周囲の方は「無視された」のではなく「聞こえていないのだ」と即座に理解してくれます。その結果、呼びかけに反応がなくても「仕方がない」と納得していただけますし、場合によっては肩を叩くなど、視覚や触覚に訴える別の手段でコミュニケーションを取ってくれることもあります。

優しさを無にしないための準備

このタグをつけることは、周囲への甘えではなく、**「優しさを無にしないための準備」**だと私は考えています。

障害の有無にかかわらず、コミュニケーションのすれ違いは誰にとってもストレスです。しかし、こちらから「聞こえない」という情報をあらかじめ開示しておくことで、相手の誤解を防ぎ、私自身の「気づけなかった」という罪悪感も減らすことができます。

もし、街中でこのタグを見かけたら、反応がなくても「悪気はないんだな」と思っていただければ幸いです。そして、同じような悩みを持つ当事者の方がいらっしゃれば、ぜひこの「可視化」という手段を試してみてください。

言葉が届かない背中でも、情報の伝え方を工夫することで、社会の優しさをこぼさず受け取ることができる。そう信じて、私は今日もこのタグと共に外出しています。


現実の効能は…!?

ちなみに、このタグをつけてからの「現実」はどう変わったかと言うと……。 正直なところ、席を譲ってもらえることよりも、満員電車などのドア付近に立っていて「避けてほしい」という意味で、グイっと体を押されることが多くなりました。

東京の電車やバスは混雑が激しいですからね。 ちょっぴり切ないですが、これも「聞こえていないなら体で伝えるしかない」という、一応のコミュニケーションが成立した結果だということで(笑)。

2025年12月10日水曜日

✈️ 空港の電子音に潜む無関心:中部国際空港で露呈したアクセシビリティの盲点

先日、中部国際空港セントレアを利用した際に遭遇した、ある自動販売機での体験を通じて、社会に残る「音のバリア」について深く考察させられました。

私はスマートフォンのアンケートに当選し、無料でドリンクと引き換えられるQRコードを入手しました。このささやかな幸運に心躍らせながら、意気揚々と対象の自販機に向かいました。

耳が聞こえない人の自販機の悲劇という4コマ漫画


認証完了の「無音」が生む混乱

自販機に備え付けられたリーダーにQRコードをかざすと、機械からは認証完了を知らせるはずの「ピッ」という軽快な電子音が鳴り響きます。健聴者にとっては瞬時に次の操作へ移るための重要な合図ですが、私にはその音は届きません。

音によるフィードバックがない状況下では、自販機はただ黙々と佇む「無愛想なマシーン」にしか見えません。コードが有効に読み込まれたのか、それともまだ角度が悪いのか、確認する術がないのです。

周囲に他の利用者がいないとはいえ、飛行機への搭乗時間が迫る中、操作に手間取ることへの焦燥感は増すばかりでした。私は不安から「まだ認証されていない」と判断し、何度もコードをかざし直しました。その間、自販機は確実に「ピッ、ピッ」と認証完了の音を立てていたはずです。


予期せぬ商品の出現と設計の非情さ

そして、何度目かの操作の後、予期せぬタイミングで一本の缶飲料が出てきました。出てきたのは私が望んだ商品ではありません。

混乱の原因は、音によるフィードバックの欠如です。私にはQRコードが有効に読み込まれた時点が全く分からなかったため、「商品を選び、ボタンを押す」という一連の操作に移行できていませんでした。

なぜその商品が出てきたのか。有効化後の操作タイムアウトで自動的にデフォルト商品が選択されたのか、あるいは繰り返しのコード操作が高機能ゆえに誤作動を引き起こしたのか、理由は不明です。しかし、原因が何であれ、利用者に操作の現状を伝えようとしない設計が、予期せぬ結果を招いたことは明らかです。

手に取った望まぬ缶を眺めながら、私はこの「音」に依存した設計の非情さを痛感しました。国内外のあらゆる人が利用する公共性の高い空港において、このような設計は、聴覚に障害を持つ人々を極めて不利な状況に置き去りにしていると言わざるを得ません。


高機能な自販機だからこそ求められる最低限の配慮

私たちの社会の多くのインフラは、音を前提に設計されています。操作完了確認音だけの設備は、聴覚障害者にとって操作完了を確認できない状態を意味します。長年の経験から「勘」で済ませることもありますが、それは常に不確実性とストレスを伴います。

セントレアのような国際的なハブ空港が備える高機能な自販機だからこそ、特別な設備を求めるのではなく、せめて標準機能として視覚的な情報をプラスしてほしいと願います。

せめて高機能自販機ではもっと視覚情報が欲しい


QRコード読み取りのような重要なインターフェースにおいては、

  • 視覚的フィードバックの強化: 「読み取り完了」や「商品を選択してください」といったメッセージを、単なる一瞬の点滅ではなく、大きな文字やコントラストの高い色で明確に表示し続けること。

これらは、開発コストを大きく上げることなく実装可能であり、すべての利用者の公平性を確保するための最低限の措置です。今回の小さな体験は、日々の生活の中で聴覚障害者が直面する不便さの氷山の一角です。すべての人にとって利用しやすいインフラが、当たり前の基準となることを強く期待します。


ちなみに、セントレアを非難する意図はありません。